「宇都宮真邸」を創出するための
“邸宅の条件”、そして
ディテールへのこだわり。

【設計・監理】 株式会社野生司環境設計

1990年の設立以来「使う方々にとっての快適な環境創造」のための『ものづくり』に邁進。集合住宅建築における「グッドデザイン賞」受賞をはじめ、商業・教育・オフィスビル建築など幅広い分野で高く評価される野生司環境設計が、宇都宮にあるべき邸宅として手がけた『ブランシエラ宇都宮』。この度、同設計事務所社長 伊東俊之氏、設計担当の道村賢治氏に『ブランシエラ宇都宮』の建築的魅力、邸宅としての魅力を設計者の観点から語っていただいた。
宇都宮のまちづくりの中枢を担う地でありながら、眺望が開け、
静謐な居住性を確保できる、まさしく「邸宅のための地」
建設地は、奥州街道と日光街道の分岐点という宇都宮の井桁状の都市計画の中枢にあるうえに、二荒山神社という宇都宮の起源を物語る地の上に位置しています。さらに北にも南にも杜を望むことができる。かつ商業地域でありながら眺望は開けるうえに南側は静謐という、まさしく集合邸宅のための場所ともいえる、稀少な場所です。
その敷地条件を最大限活かすことを設計のテーマとしなければならないと考えました。また、南はもちろん、北も、神社や公園など将来的な開発が想定しにくい環境が広がっています。つまり、歳月を超えて素晴らしい居住性を担保できる場所です。建築はそれに見合うものでなければならないと考えました。
現地周辺航空写真(2022年11月撮影)※一部画像加工を施しております。
県庁前通りを「美しくしていく」、その先導となる景観への願い
アプローチとなる県庁前通りは、宇都宮の象徴的な美しい通りです。街並みを形成するにあたって機械式の駐車場を通り沿いに配置することなどは、景観上まず避けるべきだと考えました。今後、より美しくなっていく沿道景観を主導するような気持ちでゆとりをもたせ、沿道の見切りにはボーダー状の黒御影石を用い、アプローチにはピンコロ石と大判タイルを敷きつめました。
素材の選定にあたって、栃木県並びに宇都宮の資材を意識することはもちろんなのですが、むしろ私どもの東京都心や全国区での実績を地域に融合させることで、より洗練されたものにしたい、まちづくりにあって極めて重要なポイントとなるこの地から美を発信し先導したい、そのような意識がございました。
地域性を学ぶと共に都市の洗練を融合させる。
求めたのは、「邸宅」としての美をここから先導していく想い
外壁に用いている100角の大判タイルも県庁にインスパイアされたものですが、やや落ち着いたトーンとすることで邸宅感を意識しています。建築としてのプロポーションにも、シンメトリーな形状の持つ秩序ある美しさに現代的なアクセントを加えています。県庁前通り側に用いた大判タイルの壁面、マリオンによる垂直ラインにより壁面を分節することで、洗練された都市性と権威的なだけではない邸宅としての柔らかな表情を演出しています。
100角タイルは彫りの深い素材とすることでエッジを出し、シャープな印象を醸出しつつ陰影による美しさ、時間によって移っていく陽光を受けて繊細に変わる表情の豊かさを表現できる素材です。
外壁・共用部マテリアル
2つの杜をつなぐような南北軸を形成する「奥行き」あるアプローチが、
街に新しい風景を発信し住まう方の誇りとなる。
県庁前通りから続くアプローチは、車寄せにもなる石畳みのようなゆとりのある奥行きを通って、軒天をあたたかさを感じる木調の素材としたキャノピー(庇)があるエントランスが迎える構成としています。
そして歩む方を「奥へと誘う」ように県庁前通りがある北から南へと豊かな植栽を路地状に連ねると共に、風除室の先にアイストップとなる坪庭のような緑がある景観のシークエンスを形成しています。京都の路地しかり、奥行感というのは空間の上質感を高めてくれるものです。この通景は本建設地にとって大切な南北軸を貫く路地であり、街を歩む方にも美と潤いを提供できるものとなります。そして住まう方にとってはより身近に潤いを感じていただけるよう西洋品種の華やかな花々を中心に景観を形成しています。建築がグレーッシュな分、鮮やかさが際立つ自然と、路地を思わせるしっとりとした景観による通景。ここでも「邸宅」であるための調和と融合が図られています。
スロープダウンさせることで景観をより愉しめ
ホテルライクな“特別な領域性”を創出したラウンジ
住まう方の視線に立つと、この緑景と景観のシークエンスが瞳を癒すように展開し、奥へ誘われると共に広がりが感じられ、プライベート感や落ち着きが深まっていく構成になっています。クランクするたびに景観が変わる。そして最も安らぎを感じるべき場所であるラウンジに向けてつけた高低差も、広がりや奥行き感を感じさせることに寄与しています。
たとえばエグゼクティブホテルのラウンジ等の構成に見られるように、スロープダウンする場所は、落ち着きやステイタス感と共にひとつの特別な領域性を形成します。折上天井と間接照明による天井、木調素材を用いて柔らかに仕切った飾り棚やルーバー。一方、ソファ廻りや窓台には磨きの御影石を用いた上質な意匠としました。またスロープダウンしていることにより逆に高所に位置することになる窓外の庭園風景がソファに腰かけた時、アイレベルで愉しめるように設計されています。通景の正面にあたる壁にはグレーミラーというガラス素材を用いることで、庭園風景の柔らかなシルエットが壁面に映し出される意匠としています。ソファの構成もそうですが、光沢あるものと柔らかくしっとりとした素材感を組合わせることで、互いの素材感が引立つ、居心地のよさを感じさせる高級感を醸出しています。
内廊下だけではなく階段をも内に取り込み、
全邸角住戸としたうえ南側に開口を設けた、このうえない「邸宅」
認可されている建物の容積率を最大限活かすなら、南北に長く建物を建築し東西に開口を確保するのが常識的です。しかしながらこの優れた敷地条件を紐解くうえで、南北、とくに南側に開口を設けない設計というのはあり得ないことだと考えました。設計の経済性よりも居住性を優先して配棟したのです。
建物のプロポーションにおいても、商業地域であることによって、パラペットを削られたり、建物の垂直・水平ラインの秩序を乱すような要件がないことを最大限活かすことができました。
プライベート感を徐々に深めていった先に内廊下による居住フロアがある。全邸に角住戸としてのビューと開放感が確保されている。しかも階段をも内に取り込んだことでさらに理想的な、歳月を経るほどに美を深め街並みの一角を形成し、人の心に訴えることができる建物のプロポーションを実現することができています。
外観スケッチ
南北2つの顔を持つ、“街のどこから見ても美しい建築”をめざして
集合住宅において、或いはビル建築において、外階段が街に向かって剥き出しになって「裏側」を形成しているのが一般的な建築です。「ブランシエラ宇都宮」は階段を内に取り込むことができたことにより、どこから見ても美しい建築を実現することができました。印象的な垂直ラインで都市感と洗練された上質感を印象づける県庁前通り側の「顔」。そして住宅としての柔らかさや落ち着きを水平ラインを軸に演出した二荒山神社へと向かう南側の「顔」。こうした建築を実現できる要件を備えていることそのものが稀少なのです。

「ブランシエラ宇都宮」は、建築意匠においても、そして何より重視した居住性においても、理想的な要件を満たした、まさしく「真邸」の名にふさわしい稀少な集合邸宅です。この場所でしか享受できない暮らしを、宇都宮という都市の豊かさを愛する方にこそ謳歌していただきたいと想います。
【設計・監理】 株式会社野生司環境設計
1990年、野生司義光氏により設立された設計事務所として、集合住宅建築にはもとより商業・教育・オフィスビル建築など幅広いフィールドでものづくりを実践。『銀座久兵衛本店』では「東京建築賞優秀賞」「日本建築士連合会優秀賞」等「建築3賞」と呼ばれる建築賞を受賞。その創造力が宇都宮の真都ともいえる地に出会った集合邸宅の誕生を、ぜひご期待ください。
  • 銀座久兵衛本店 (1993年竣工)
  • 久兵衛 ホテルニューオータニ本館店 (1997年竣工)
  • ヤマザキ学園大学南大沢3号館 (2016年竣工)
※掲載の完成予想CGは設計図書を基に描き起こしたもので、実際とは多少異なる場合がございます。形状、仕様、外構等については設計・施工の都合等により変更が生じる場合がありますので、予めご了承ください。※雨樋、エアコン室外機、給湯器等再現されていない設備機器がございます。※植栽は特定の季節の状況を示すものではありません。また竣工時には完成予想図程度には成長しておらず、位置・形状は実際とは多少異なる場合があります。