不動産経済コラム

不動産経済コラム

主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.02

地震、浸水…
災害に強いマンションとは?

2015.11.

<2>新耐震基準によって、マンションは倒壊から免れた!?

マンションの多くは1981年に制定された「新耐震基準」が採用されており、震度6~7の地震でも建物が倒壊しない堅固な構造で建築されています。それ以前の「旧耐震基準」に従った建物が1978年の宮城県沖地震で倒壊したことから、たとえ建物の一部が損傷しても全体が倒壊することを防ぐことを目標とした基準へと改められたものです。実際に、1995年の阪神淡路大震災では「旧耐震基準」の建物が倒壊するケースも多くみられましたが、「新耐震基準」適合の建築物では被害は大幅に少なかったとされています。ただ、直下型の激しい断層地震であったため、わずかですが倒壊したマンションもありました。

2011年の東日本大震災では、最大震度7という激しい揺れを受けた地域でも、建物の一部損壊という被害はあったものの、マンションの倒壊被害は生じていません。東日本大震災によるマンション被害の状況をまとめた調査によると、調査対象4万6365棟のうち、建物本体の建て替えが必要となる致命的な被害「大破」はゼロ。「中破」が 44 棟(0.09%)、「小破」が 1,184 棟(2.55%)、「軽微・損傷なし」 45,137棟(97.36%)でした。大変な被害をもたらした災害ではありましたが、マンションは居住者の生命を護るという最も重要な役割を果たしたといえるでしょう。

ただし、「中破」や「小破」とされるマンションでも、揺れや地盤の液状化によって共用部分や受水槽などのライフラインが損傷したものも多く、停止したエレベーターの復旧には数日から1週間程度を要したケースもあったようです。建物の主要構造物以外の、共用部分に関する災害対策については、記事の後半で見ていきたいと思います。

東日本大震災によるマンション被害

出典:社団法人高層住宅管理業協会「東日本大震災の被災状況について」平成23年9月
http://www.kanrikyo.or.jp/news/data/hisaihoukoku20110921.pdf

<3>耐震、免震、制震…構造の違いを理解しておこう

地震の揺れからマンションを守るための技術が「耐震構造」や「免震構造」、「制震構造」と呼ばれるものです。現代のマンションはこれらの技術を活用して、震度7の地震にも耐える構造的な強固さを持っているのです。これらの技術はどれが優れているとは一概には言い切れず、超高層建築物では制振と免震構造を組み合わせるなど、そのマンションが建つ地盤や建物の規模・形状、階数などの諸条件によって複数の技術を採用するケースもあります。検討中のマンションがどのような構造で地震対策を行っているのか、不動産会社の担当者に詳しく説明をお願いすればいいでしょう。

■耐震構造
柱や梁など主要構造物の強度を高めることで、建物全体で揺れに耐えるという構造。低層~中層の一般的なマンションはほとんどがこの構造となっています。震度7の地震が発生しても居住者の人命を護ることを大前提として、ダメージを受けても倒壊や崩壊しない強度を持っています。

■免震構造
基礎部分に積層ゴムなどの免震装置を設置することで基礎部分と建物部分を分け、地盤からの揺れを建物に伝えにくくする構造。建物内の揺れが小さくなることで、室内の家具転倒被害やライフラインの損傷も少なくなることが想定されます。

■制震(制振)構造
建物内部にダンパーなどを設置して揺れを吸収する構造。各階や屋上部に制振装置を設置することで横揺れを抑える効果が期待できるほか、高層建築の強風による揺れにも効果を発揮します。地震を制御するのではなく、建物の振動を制御することを指すため「制振構造」と表記されることもあります。

各構造のイメージ図

■住宅性能表示制度にも耐震性を評価する項目がある

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」いわゆる「品確法」にもとづいた「住宅性能表示制度」にも「構造の安全」を等級によって評価する項目があります。「耐震」について建築基準法の1.0倍の強度は「等級1」、1.25倍の強度は「等級2」、1.5倍の強度は「等級3」といった評価を第三者機関が判定するというもので、等級が上がるほど安全性が高いと判断できます。この表示制度は任意なのですべての新築マンションが対応しているものではありません。