不動産経済コラム

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主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.03

地震対策の第一歩、
マンションの耐震性能を知っておこう

2016.07.

  • 住宅コンサルタント・住宅セカンドオピニオン

    寺岡 孝 てらおか たかし

1960年東京都渋谷区生まれ。大手ハウスメーカーに20数年勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。現在では人気サイト「専門家 プロファイル」や朝日新聞がおススメする東京の専門家サイト「マイベストプロ東京」また、マンション購入サイト「マンションってどうよ?」の登録専門家でもある。サポート・コンサルタント相談案件1,000件以上

国や研究機関の試算により、甚大な被害が出ることが予想されている「東海」・「東南海」・「南海」のいわゆる南海トラフ地震。今後30年のうちに発生する確率は東海地震が88%、東南海地震が70~80%、南海地震が60%ともいわれています。
そんな大地震が起きた際に、自分の住んでいるマンションは揺れに耐えられるのかと心配される方も多いのではないでしょうか。また、自分の住んでいるマンションの耐震性はいったいどうなっているのか、そんな疑問をお持ちの方も多いはずです。そこで、今回はマンションの耐震性能について、考えてみることにしましょう。

<1>耐震基準はどういった経緯で決まったのか?

2011年の東日本大震災以降、住まい選びの際に建物の耐震性を重要視する方が多くなりました。また、2016年4月に発生した熊本地震によって、さらに建物の耐震性に注目が集まるようになりました。
この熊本地震では、震度5以上の地震が頻繁に起きるという今までに経験したことのない地震のパターンによって、当初は倒壊していなかった建物でも、2度、3度と大きな揺れを受けて倒壊してしまったというケースもありました。これまでは、このように大きな揺れが連続して発生するケースは想定外でしたので、耐震基準の見直しが必要かもしれません。こうした背景を踏まえて、現状の耐震基準はどのような経緯で決まっていったのかをみてみましょう。

歴史的背景からみてみる

日本は世界的にみても地震大国であることはみなさんもご承知の通りでしょう。では、近年起きた地震を時系列的にみていきたいと思います。

地震対策の第一歩、マンションの耐震性能を知っておこう

<1923年9月:関東大震災>
よく知られている関東大震災。東京を中心に大きな被害があり、死者、行方不明者約10万5000人、全壊家屋が約11万戸、半壊も約10万3000戸というものでした。この地震を機に耐震設計法規の制定が進められ、1919年に制定された市街地建築物法が、この地震の翌年に改正されました。
これは世界初の耐震規定と言われ、地震力(地震発生時に地面と水平方向に振動する力)という考え方が導入されました。当時は、頻繁に起こりうる地震を関東大震災の3分の1と想定し、その地震力に耐える建物にするということが定められていました。
その後、1950年に建築基準法(旧耐震)が制定されたことにより、この市街地建築物法は廃止されました。建築基準法(旧耐震)では、全国の建物に耐震設計が義務付けられ、1959年にはその施行令改正がありましたが、この頃から地震に対する考え方が変わり始めたともいえます。

<1964年6月:新潟地震>
新潟、秋田、山形の3県で、死者26人、全壊約1900戸、半壊約6600戸の被害が出ました。この地震では液状化の被害も大きな問題となりました。新潟市内では液状化による地盤沈下で鉄筋コンクリート造の県営アパートが転倒するなどの被害が多く見受けられました。

<1968年5月:十勝沖地震>
青森を中心に北海道南部、東北地方で、死者52人、全壊約670戸、半壊約3000戸の被害が出ました。この2年後に上記の地震被害の状況を受けて、建物が地震の揺れによってズレて切断してしまう「せん断」を防ぐための補強筋の間隔を短くすることや、木造建築物の基礎をコンクリートか鉄筋コンクリートとする建築基準法の改正がありました。