不動産経済コラム

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主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.06

ファミリー世帯の、
将来を考えた街選びのポイント

2018.07.26

  • フリーランス&ライター

    井村 幸治 いむら こうじ

フリーランスエディター&ライター。1964年、和歌山県生まれ。リクルート(現リクルート・ホールディングス)にて不動産、ブライダル領域の編集に長年にわたって携わる。その後フリーランスとして住宅、都市開発、メディカル、ブライダルなど様々な分野で取材執筆活動を行う。東京⇒名古屋⇒大阪の転居を2回ずつ経験したことで、各都市の住宅事情にも精通。日本各地への取材、旅行経験も豊富。現在は大阪府吹田市「千里ニュータウン」在住。

住宅購入を考える場合、部屋の広さや間取り、設備や仕様はもちろんですが、長く住み続けるためにはどんな街を選ぶのかということがとても重要なポイントになります。今回は30~40代のファミリー世帯にとって、長く住み続けられる街の条件はどんなものなのかを考えてみましょう。

<1>子育てを優先した「育住近接」という選択

子育ての環境を優先した街選びが大きなポイントになる

10年、20年と長く住み続けたくなる街の条件は、年齢や家族構成、通勤・通学の場所によっても異なります。シングルやDINKS世帯であれば、通勤の利便性が高く、仕事帰りに買い物できるような商業施設がある街が優先となり、「職住近接」スタイルを実現できる都心エリアの街が人気です。

しかし、30~40代のファミリー世帯となると選択基準は大きく変わります。子どもの誕生から成人までには約20余年という長い期間を過ごすことを考えると、大きなウェイトを占めるのは子育ての環境でしょう。

子どもが小さな時には周辺の自然や公園、小児科など医療機関の有無、保育園や学校までの距離や通学路の安全性といった条件も大切になります。子どもが成長して、中学受験やそれ以降の教育環境を考えると、希望する学校の校区や通学時間なども考慮する必要があります。受験対策を考えて進学塾の多い街や、塾に通いやすい街を選ぶという人もいます。

子どもが健やかに成長していくためには、住まいや周辺の環境、そして育児や教育環境などの条件を慎重にチェックしていく必要があります。

子育て世代には「育住近接」スタイルも選択肢のひとつ

近年、特に重要性を増しているのが育児環境です。共働き世帯が増加の一途をたどるなか保育園を巡る待機児童問題は社会的な課題となっています。さらに、小学校入学にともなう学童保育の確保も大きな課題となっています。

子どもの出産前には「職住近接」スタイルで都心・駅近の街に住んでいたものの、子どもが産まれてから希望する場所で保育園が見つからずに、送り迎えに時間を要して「職住近接」のメリットを享受できない…。そんなケースも増えています。利便性が高い人気のエリアでは、待機児童問題の解消が難しいという実情もあります。

東京都の自治体別待機児童数

平成29年4月1日現在の東京都の自治体別待機児童数(出典:東京都福祉保健局 報道発表)

そんな中で、注目されつつあるスタイルが「育住近接」という考え方です。多少駅から離れたエリアでも、自宅近くに保育園や学童施設が、あるいは駅に向かう道すがらにあれば送り迎えの時間や手間も省け、トータルで考えてみると負担が軽くなる、という発想です。

ニーズに応えるかたちで、保育園や学童保育などをマンションや団地内に設置した物件も登場しています。また、国土交通省からは保育園不足が見込まれるエリアへの大規模マンション建設の際には、開発事業者に保育施設設置を要請するよう地方公共団体に通知が行われるなど、国の政策面からもバックアップが行われようとしています。

育住近接のイメージ図

育住近接のイメージ図

「職住近接」、都市アクセスや駅からの距離だけではなく、「育住近接」の発想での街選び、住まい選びがあるということを知っておきましょう。