不動産経済コラム

不動産経済コラム

主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.10

コロナ禍とテレワークで
マンションが売れている!?

2020.12.25

  • フリーランス&ライター

    井村 幸治 いむら こうじ

フリーランスエディター&ライター。1964年、和歌山県生まれ。リクルート(現リクルート・ホールディングス)にて不動産、ブライダル領域の編集に長年にわたって携わる。その後フリーランスとして住宅、都市開発、メディカル、ブライダルなど様々な分野で取材執筆活動を行う。東京⇒名古屋⇒大阪の転居を2回ずつ経験したことで、各都市の住宅事情にも精通。日本各地への取材、旅行経験も豊富。現在は大阪府吹田市「千里ニュータウン」在住。

2020年の年末に不動産業界に関わる友人たちとzoom忘年会をしていたところ、大手リフォーム企業に勤務する女性が「仕事が忙しくて、マンション探しが進まず、気がついたら、めぼしいマンションが完売していたの」と言っていました。

新型コロナウイルスに翻弄された2020年。家にいる時間が増え、住環境をより快適にしたいと感じている方も多いでしょう。そのような中で、マンション市場はどのような動きを見せたのでしょうか。

1)新築マンションは売れ行き好調

新築マンションの販売戸数が増加、契約率も好調

まず新築マンションの売れ行きです。不動産経済研究所発表の「首都圏のマンション市場動向」2020年10月度によると、新築マンションの新規販売戸数は前年の2007戸と比べて67.3%増の3358戸と、大幅増加となりました。前月(9月)の2477戸と比較しても35.6%増と、販売戸数増加のトレンドが続いています。緊急事態宣言が発表されていた2020年の4月は686戸、5月は393戸と激減していたマンション販売ですが、状況が変化している様子がわかります。

一方で、売れ行きを表す月間契約率は10月が70.4%。前月の73.4%に対してはダウンしましたが、前年同月の42.6%と比べると大幅アップとなっています。契約率70%が売れ行きの好不調を判断する目安とされていますので、70%を超えた10月の新築マンション市場は「好調に売れている」と判断することができそうです。

ちなみに首都圏の新築マンションの1戸当たりの平均価格が6130万円、1㎡当たり単価が95.3万円となっています。前月(9月)は平均価格が5812万円、1㎡当たり単価が87.7万円だったので、平均価格は318万円(5.5%)、1㎡単価は7.6万円(8.7%)アップしました。前年(昨年10月)は平均価格が5992万円、1㎡当たり単価が91.4万円だったので、平均価格は138万円(2.3%)、1㎡単価は3.9万円(4.3%)のアップと、いずれも上昇を示しています。

月間販売戸数の推移(首都圏・近畿圏)

すぐに入居できる、完成済みマンションの在庫が減少

さらに注目したいのは完成済みマンションの在庫数減少です。前章で述べたのは新規に販売開始された新築マンションのデータですが、このほかに建物が完成したものの、一部住戸の販売が続いている「完成在庫」と呼ばれる物件も存在しています。

不動産経済研究所によると首都圏の完成在庫数は2020年1月が4033戸でしたが、10月は3176戸と約2割の減少となりました。在庫が一気にはける、そんな動きが夏場以降に顕著になっています。やはりコロナ禍による、テレワークの浸透が大きな要因となっているようです。

首都圏の完成済みマンション在庫数

コロナ禍によって自宅でのテレワークが常態化すると、「いまの賃貸でストレスを感じながらテレワークを続けられない。より快適な環境をすぐに手に入れたい。だから完成済み新築マンションに魅力を感じた」という購入者が増えているのです。

・すぐに快適な住居がほしい
・仕事のできる部屋、広い専有面積がほしい
・都心部オフィスへの通勤頻度が減ったため郊外でもいい、または駅近物件ではなくていい

など、新築マンションに対するニーズの変化によって、完成在庫が売れていく状況がうかがえます。