不動産経済コラム

不動産経済コラム

主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.03

地震対策の第一歩、
マンションの耐震性能を知っておこう

2016.07.

現在の新耐震基準ができたきっかけ

<1978年6月:宮城県沖地震>
宮城県仙台市を中心に、死者28人、全壊約1200戸、半壊約5600戸の被害が出ました。十勝沖地震の時と同様、地震が起きた2年後の1980年に建築基準法の大改正が行われました。
この大改正により、いわゆる新耐震設計法ができ、1981年6月以降に建築確認が行われた建物を「新耐震」、それ以前は「旧耐震」という区別がされるようになりました。現行の耐震基準はこの「新耐震」と称されるものであり、「震度5強程度の地震ではほとんど損傷を生じず、震度6強から7程度の大地震でも人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じない」というものです。
「旧耐震」では震度6強から7程度の大地震に対する規定がなかったのに対して、「新耐震」ではそうした大地震でも建物が倒壊せず人命を守れるようにするという、大幅な基準強化が行われたものが今の耐震基準となっていることを覚えておいた方がいいでしょう。

平成以降の地震

<1995年1月:阪神淡路大震災>
阪神間、淡路島を中心に起こった地震で、死者6400人、全壊約10万5000戸、半壊約14万4000戸の被害が出ました。いわゆる都市直下型で予想を上回る揺れを観測しました。そのため、多くの被害が発生したのはまだ記憶に新しいところです。
同年12月には、阪神淡路大震災で倒壊した建物の検証をして、倒壊の原因となったものを是正、改善する「建築物の構造耐力上の安全確保に係る措置」という建築基準法の改正が行われました。さらに、「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」の改正によって、新耐震基準以前の建物に耐震診断が義務付けられました。
また、2000年には木造住宅に大きく影響を与える改正と、すべての新築住宅に関して10年間の瑕疵担保責任を義務付けた「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」の制定、さらに、2005年には、当時社会問題となった耐震偽装事件を受けて、建築確認・検査の厳格化、中間検査の義務化など、建築基準法や建築士法の改正が行われました。

<2011年3月:東日本大震災>
今まで列挙した地震の中でも、もっとも大きな地震で、揺れだけでなく、津波でも大きな被害が出たのは説明するまでもありません。

<2016年4月:熊本地震>
過去に起きた地震と異なり震度5以上の揺れが何度となく発生した、新しい形の地震となりました。これまでの法改正の流れ同様、この地震は、今後の建物の構造や設計に対する考え方を改める転機になるかもしれません。

こうした歴史的な背景からも、大きな地震を契機としていわゆる新耐震の基準が出来上がり、現在に至っているということが理解できるかと思います。