不動産経済コラム

不動産経済コラム

主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.08

「テレワーク時代」で
マンション選びはどう変わる?

2020.08.31

街選びの考え方が大きく変わる!

テレワークが浸透し、通勤から解放される人が増えれば、街選び・マンション選びの考え方も大きく変化するかもしれません。

これまで、街選びの条件の中では勤務地までの通勤時間や乗り換え利便性、駅までの距離など「交通アクセス」も多くの人が重視していました。しかし、その傾向にも既に変化が表れている事を下記のデータから読み取る事が出来ます。

マンション購入において最重視する項目を質問した際の、「2019年5月~7月」と「2020年5月~7月」の比較表です。「駅徒歩」を重視している方が、24.2%から、14.8%と約10ポイントも減少している事がわかります。

通勤の必要性が低くなり、普段は自宅でテレワークして週に何回かオフィスに出社する・・・といった生活が日常になれば、駅近の優位性が低くなるでしょう。駅から多少遠くても、周辺環境や生活利便性に優れたマンションに住むという選択肢が生まれるかもしれません。

都市通勤が必須でなくなれば、地価や物件価格の割安な郊外部の住まい選びも選択肢に浮上してくるでしょう。購入コストを抑えられれば、快適に仕事ができるような室内空間の環境整備にコストをかける、といった考え方にシフトする事も想定されます。

「自分の好きな街」を「住む街」として選びやすくなる?

同じく株式会社Housmartで、「マンション購入検討状況」を調査した結果によると、下記のデータも確認できます。

  • マンション購入検討状況
  • マンション購入検討状況

希望するエリアについては、「今住んでいる近所で探したい」と答えた人が、2019年の31.1%から2020年の30%とほぼ横ばいで、住み慣れたエリアでマンションを探したい方は変わらず一定数いるようです。

一方「職場の近くで探したい」と答えた人は2019年では8.5%だったのに対し、2020年は6.7%とやや減少している事が確認できます。こちらのデータからも「交通アクセス」を重視する人が減っていると読み取る事も出来るでしょう。

そして、「希望エリアは決まっている」と答えた人が、2019年の26.8%から2020年は36.8%と10ポイントも増加している事が確認できます。テレワークが浸透する事で、住まい選びの基準として、「交通アクセス性」や「職場の近く」である事を排除して考えられるようになった結果、自分の趣味・嗜好や、家族の理想などを元に、働く事と切り離して追求しやすくなったとも言えるでしょう。

“withコロナ”時代、マンション選びの考え方

自宅でテレワークする事が多くなり、住まいに対して「駅近」や「アクセス性の良さ」を求めなくなった分、それ以外の希望を求めやすくなりました。これまで諦めていたエリアでの街選びや、優先順位を下げていた設備環境を必須環境として求める方も増えてくるでしょう。

さらに、自分の趣味や子育ての環境、将来設計、親の介護など、理想の暮らしや先々の変化も予測しながら“withコロナ”時代のマンション選び、新しい時代のマンション選びを家族みんなで真剣に話し合ってみるとよいでしょう。後悔のない、あなたに合った選択がきっと見つかるはずです。

文:井村 幸治(フリーランスエディター&ライター)
2020年8月掲載

  • フリーランス&ライター

    井村 幸治 いむら こうじ

フリーランスエディター&ライター。1964年、和歌山県生まれ。リクルート(現リクルート・ホールディングス)にて不動産、ブライダル領域の編集に長年にわたって携わる。その後フリーランスとして住宅、都市開発、メディカル、ブライダルなど様々な分野で取材執筆活動を行う。東京⇒名古屋⇒大阪の転居を2回ずつ経験したことで、各都市の住宅事情にも精通。日本各地への取材、旅行経験も豊富。現在は大阪府吹田市「千里ニュータウン」在住。