不動産経済コラム

不動産経済コラム

主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.10

コロナ禍とテレワークで
マンションが売れている!?

2020.12.25

2)中古マンションも売れ行き好調

11月の中古マンション成約件数は過去最高

コロナ禍とテレワークの浸透は中古マンション市場にも変化をもたらしています。公益財団法人東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の調査によると、2020年11月の首都圏における中古マンション成約件数は 3,620 件で、11月としては 1990年5月の調査開始以来、過去最高の戸数となりました。前年比ではプラス14.0%と2ケタ増、10月に続き前年同月を上回っています。

一方、新たに中古マンションとして新規登録された物件件数は13,773 件で前年比マイナス17.2%の2ケタ減となり、19年9月から15ヶ月連続で前年同月を下回るトレンドが続き、前月比でもマイナス8.8%となりました。また、在庫38,520件で前年比マイナス 19.2%の 2 ケタ減となり、12 ヶ月連続で前年同月を下回し、前年比の減少率は6月以降、拡大しています。2020年4,5月は緊急事態宣言により一時取引が急減したものの、6月以降は動きが急速に回復し、「好調」とも言える状況が続いています。

月間販売戸数の推移(首都圏・近畿圏)

リフォーム市場も活況、2021年は市場拡大予測

中古マンションの成約増加はリフォーム市場にも影響を及ぼしています。冒頭に紹介した友人が勤務するリフォーム会社の状況を聞くと、受注も増えているようです。その内容は多岐にわたり、風呂や洗面、キッチンなどの水回りの更新需要もあれば、テレワーク用の書斎スペースの新設、さらには全面リノベーションの大工事など、多くの依頼が舞い込んでいるそうです。

矢野経済研究所では住宅リフォーム市場に関する市場調査および予測を行っていますが、2020年は前半にコロナの影響を大きく受けて縮小となるものの、2021年は市場回復の予測を出しています。テレワークの対応需要だけでなく、withコロナの新しい生活様式に合わせたリフォーム需要の拡大が想定されています。

中古マンション市場には、2000年前後に年間8万戸の大量供給があった時期の物件も数多く出始めています。ちょうど築20年を迎えリフォーム、リノベーションが必要な時期にあたります。中古マンションを購入し、現在の暮らし方に合った住まいへと、思い通りに作り替えるという選択肢も増えるかもしれません

3)消費者のニーズや心理状態にも変化

コロナ禍が住宅購入検討のきっかけに!

コロナ禍とテレワークの浸透は、住宅購入に対する心理変化も引き起こしています。リクルート住まいカンパニーが発表した「第2回コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」では、2020年5月と9月時点の比較も含めた調査ですが、半年にも満たない時間の中で、検討者の心理状態にも変化が起こっていることがわかります。

5月時点ではコロナの拡大によって「検討の中止、休止」、「モデルルームなどへの訪問をやめた」と回答した人が合わせて50%を超えていました。しかし、9月時点ではその数値は大きく下がり、逆に「住まい探しを始めるきっかけとなった」と回答する人が21%と、5月より6ポイント増加し、マンション市場の活況を裏付けるような調査結果となっています。

仕事も快適にできる住まいが求められる

また、「住み替えの検討のきっかけ」を聞いた項目では、「在宅勤務になった/増えた」を挙げる人が17%と最も多くなっていて、5月時点よりも9ポイントも増えています。逆に「結婚」「第一子出産」「自身/配偶者の転勤」が減少を示しています。

この半年、コロナ禍によって出勤や外出活動が制限され新しい生活様式を求められ、そして酷暑の夏を超えるという経験を多くの人がしたはずです。その結果、「もっと暮らしやすい、快適な家に住みたい」という願望が大きくなった人も多そうです。

それは「コロナ拡大による住宅に求める条件の変化」という質問でも、顕著に表れています。「仕事専用スペースがほしくなった」が1位となったほか、2位に「通信環境」、3位に「換気性能」、4位「日当たり」、5位「省エネ性能」と続き、住まいの快適性や性能を求める項目が上位に挙がっています。家で過ごす時間が増え、テレワークの際にも快適に過ごせる環境を求める声が切実になっているということでしょう。

このほか、職住近接の志向は弱まり、駅からの距離よりも広さを求めるニーズが引き続き増加しています。テレワークが浸透して都心通勤が必須でなくなれば、地価や物件価格の割安な郊外部や、駅から離れた場所もマイホームにふさわしい場所として考えることができます。購入コストを抑えられれば、その資金で広い部屋にする、快適に仕事ができるような室内空間の環境整備にまわす、といった選択も可能です。