不動産経済コラム

不動産経済コラム

主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.01

ずっと賃貸住宅に住み続けますか?
将来計画を見据えた住宅計画は?
賃貸と購入 徹底比較

2014.8.

<3> 賃貸か購入かは65歳の住居費を目安に

以上賃貸と購入を比べてみましたが、いかがだったでしょうか。
賃貸と購入では、当初はあまり差がなく、賃貸の方が初期費用が少なく、引っ越しも自由にできるので気楽に見えますが、購入した場合のローン返済終了後に決定的な差が出てくるようです。
購入した場合は、すでにローン返済の終わった不動産資産を持ち、月々の出費もわずかで、安心した将来を迎えることができるように見えます。
これに対して賃貸の場合は、家賃の支払いが続くわけです。仮に30歳を起点とした場合、35年返済で65歳にはローンが終了しますが、賃貸の場合はローン65歳以降も高い家賃を支払わなければなりません。70代、80代となっても家賃の支払いは続くのです。

高齢になった時に家賃を支払い続けることは想像しただけで大変です。
現役時代に手取月収が30万円で家賃が10万円とすると住居費割合は1/3ですが、65歳になり年金が月々20万円だとすると、居住費割合は1/2になり大きく家計に響いてきます。
筆者は住居に関する出費は、65歳を過ぎたら基本的に管理費や固定資産税等を除いて出費をゼロにすることを推奨しています。65歳以降も賃貸の場合、余命20年とすると、家賃10万円を月々払うと単純に10万円×240ヶ月(20年)で2,400万円もの出費がかかることになります。

先日、厚生労働省から日本人の寿命についての発表がありました。日本人男性の平均寿命が過去最高の80.21歳となり、初めて80歳を超えたそうです。女性は前年より0.2歳上がって過去最高の86.61歳となり、2年連続の世界一になりました。このように長寿化が進む中、賃貸住宅に住むということは「一生家賃を支払う」というリスクを抱えることにもなります。リタイヤ後の総支出額を考えれば、圧倒的に購入の方が得ではないでしょうか。

また、マンションを購入してローン返済が終了していれば、その資産を担保にして月々の生活費をもらう、いわゆる「リバースモーゲージ」も可能となります。
毎月の住宅ローンを支払っていけばやがてローン返済終了となり、その後は住居費が少ない生活となります。またマンションを賃貸に出したり、売却したりと自由にすることもできます。そう考えると、住宅ローンは将来に向けての「積立金」とも言えるのではないでしょうか。

しかしマンションをせっかく買ってもローン返済が完了したときに資産価値がなくなってしまっては元も子もありません。住宅を購入する際は立地、品質、維持管理等が重要になってきますので、将来の資産価値を踏まえた視点で住まいを選ぶことが重要です。

 

筆者はマンション購入セミナーで一緒に講演させて頂いたファイナンシャルプランナーの先生が、次のような面白い年金川柳を披露していました。

「我慢して ひっそり暮らす 奇数月」

年金は2、4、6月と偶数月に支給されます。つまり、1、3、5月等の奇数月には支給されません。実際には2ヵ月分まとめて支給されるのですが、ここでちょっと頭の中でイメージして下さい。奇数月にはまったく収入がありません。やはり心理的に不安になるものではないでしょうか。それで奇数月はつつましく暮らす、という意味です。

しかし賃貸暮らしの方はさらに毎月の「家賃の出費」が続くわけです。またご夫婦で年金暮らしの場合は、ご主人が亡くなってしまって家計が立ち行かなくなってしまうことも考えられます。。
このように、将来の生活設計を考えた場合は、65歳でリタイヤする時には住居費の負担がなくなるようにしたいものです。

ここまでお読みくださりありがとうございました。
(※以上は野中清志の考えであり、長谷工グループ各社の予想・主張・発表とは異なります)

文:野中清志(住宅コンサルタント)
2014年8月掲載

  • 住宅コンサルタント/宅地建物取引主任者

    野中 清志 のなか きよし

株式会社オフィス野中 代表取締役。大手不動産会社を経て2003年に東京・中野に株式会社オフィス野中を設立。ファミリーマンション、コンパクトマンション・ワンルームマンションともにユーザーサイドに立ったマンションの選択眼を持つ。マネー誌などへの執筆、全国でのセミナー講演など多方面で活躍中。難しい内容もわかりやすく伝える、ウィットに富んだ話しぶりと、データに基づいた正確な市場分析が特徴。著書に『「売れる」「貸せる」マンション購入法』『ワンルームマンション投資法』(ともに週刊住宅新聞社)などがある。
■所属団体:公益社団法人日本不動産学会・会員 / 日本不動産ジャーナリスト会議(JREA)・会員