不動産経済コラム

不動産経済コラム

主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.07

「本当に住みやすい街大賞2020」
からみる街選びのポイント

2020.02.12

その3 「教育環境」は安全安心できる街づくりとキャンパスの存在

「教育環境」は保育所定員数や待機児童数、医療費の補助なども含めて、教育環境整備に対する行政の支援体制のチェックも大切なポイントです。その点でも「川口」は高評価となっています。「川口」駅前には整備された大型の公園や、充実した図書館施設など、子育てファミリー層が安心できる環境が整備されています。「赤羽」や「王子」が位置する東京都北区は”子育てするなら北区が一番”を掲げ、子育て応援サイト 「きたハピ」の開設など子育てファミリー層を支援する街づくりを積極的に進めている点も評価されています。

もうひとつ、キャンパスのある街には独特の雰囲気と魅力があるように感じます。若者が多く活力を感じられるだけでなく、付属の小中学校が人気を集めているケースもあります。また国内の学生に限らず、外国人留学生や海外からの研究者を受け入れるために施設を整備する学校も多く、外国語や異文化に触れ合う機会も少なくありません。

ランキングでは、「柏の葉キャンパス」には東京大学、千葉大学のキャンパスがあり駅名の由来にもなっています。「武蔵小金井」も東京学芸大学など教育関連施設が豊富、「赤羽」も東洋大学のキャンパスが整備されることで街の様子が大きく変化したと言われています。教育・文化面の充実度から街を選ぶのであれば、キャンパスの有無も確認してみるといいかもしれません。

その4 「コストパフォーマンス」は㎡単価を計算してみる

「コストパフォーマンス」は住宅の物件価格だけでなく、家賃相場や物価水準なども含めた生活コストという観点からチェックすると良いでしょう。ランキングでは「川口」「柏の葉キャンパス」「入谷」「小岩」「ひばりヶ丘」などが高ポイントを獲得しています。都心エリアと比べると地価自体が比較的抑えられており、供給のタイミングによっては、物件価格がリーズナブルであったことも評価の背景にありそうです。

地価水準については公示地価などの地価調査を活用すれば、街ごとの地域差を比較することもできます。また、駅周辺の賃貸相場を比較することでコストパフォーマンスの良し悪しをある程度判断することも可能です。賃貸物件のポータルサイトなどを活用して、「3LDKで70㎡前後」といったファミリータイプの賃貸物件を検索して比較すれば、地域差が浮き彫りになるでしょう。

また、分譲マンションの相場観をみるなら、「㎡単価」を計算してみるといいでしょう。
坪単価とは価格を専有面積で割った数値です。
たとえば専有面積70㎡・5000万円の住戸があったとすると、5000(万円)÷70(㎡)=㎡単価約236万円 となります。近隣エリアの新築マンションや中古マンション、他エリアの物件と坪単価を比較することで「割高」「割安」の比較検討をする材料として使うことができます。

地価については国土交通省の「土地総合情報システム」が参考になります。
https://www.land.mlit.go.jp/webland/

その5 「発展性」は街づくり計画や再開発の可能性に注目

「発展性」のポイントが高かったのはやはり「川口」。かつて鋳物工場が並んでいたエリアも住宅ゾーンとして拡大し、駅周辺を含めた再開発も進行しています。2018年4月には中核市に移行したことで、今後もさらなる発展が見込まれています。「赤羽」は総戸数3300戸を超える大団地「赤羽台団地」の建替再生事業が進行中、官民一体の未来的な街づくりが進む「柏の葉キャンパス」も「発展性」に高評価を獲得しています。成熟したイメージのある「たまプラーザ」も駅直結の商業施設の誕生や団地の建替えなど、今後の環境整備への期待が高ポイントを獲得しています。

少子高齢化が急速に進むなか、今後の街の発展性には大型団地の再開発や公共施設などのインフラ再生事業が大きな影響を与える可能性があります。団地や工場跡、駅前の再開発など、大規模な都市計画は市区町村の担当部署に情報が集約されていますので、気になる街があれば自治体のホームページを確認するといいでしょう。

大規模で周辺への影響が大きな計画が発表された際には、新聞などで報道されるケースも多いです。また、都市計画や建築関係のニュースをまとめて提供しているWEBサイトもありますので、街の未来を変えていくような情報を逃さないように活用しましょう。

【コラム】将来の人口増減など予測データが確認できるが「RESAS(リーサス)」

街の未来を考えるための参考になりそうなツールが地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」(https://resas.go.jp/#/11/11203)です。経済産業省と内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が提供・運用しているサイトで、簡単な操作で各地域の人口の変化や人の流れ、企業活動のデータを図やグラフで分かりやすく表示させることができます。

例えば将来の人口がどのように変化していくのかといったシミュレーションが簡単にできます。「RESAS(リーサス)」の将来人口推計機能を使って東京都北区と埼玉県川口市の人口増減を予測したのがこちらのグラフ。全国的に少子高齢化、人口減の推測がされる中でも、その推移のスピードはエリアによって様々です。今後、街と共に人口がどのように変わっていくか、街選びを考える際の参考にしてみるといいでしょう。

  • 人口増減
  • 人口増減

3)防災対策も住みやすさの重要なポイントに

街選びの前にハザードマップも確認!

昨年は台風により度重なる被害を受けた地域もありました。じわじわと地球温暖化が進めば、台風による被害は今後もさらに増える可能性が取りざたされています。さらに、南海トラフ地震や直下型地震にも備えておく必要があります。2章で例を挙げたように、既に「災害時の避難のしやすさ」「水害・津波の受けにくさ」「火災の延焼の防止」を住環境の考える上での重要ポイントに挙げる人も数多くいます。住みやすい街を選ぶ際には、防災という観点が、これまで以上に重みを増してくる時代になりそうです。

大雨や台風、地震や津波などの自然災害の被害リスクは、それぞれのエリアによって違っています。ハザードマップなどを活用し、事前に予測される事態を認識して備えておくことが被害の軽減につながるはずです。ランキングに入った街でもさまざまな防災対策が実施されています。たとえば「東雲」のある江東区では区内の3000ヵ所に街頭消火器を設置、「赤羽」「王子」のある北区では災害備蓄倉庫やマンホールトイレを整備しています。

街を選び、最終決定する前に防災面という観点からもチェックしてみてください。

【コラム】ハザードマップポータルサイトを活用しましょう

洪水・土砂災害・津波のリスク情報、道路防災情報、土地の特徴・成り立ちなどを地図や写真に自由に重ねて表示できる「重ねるハザードマップ」機能や各市町村が作成したハザードマップへのリンクも検索できるサイト。街選びの際には、ぜひ活用してみたい。
https://disaportal.gsi.go.jp/

文:井村 幸治(フリーランスエディター&ライター)
2020年2月掲載

  • フリーランス&ライター

    井村 幸治 いむら こうじ

フリーランスエディター&ライター。1964年、和歌山県生まれ。リクルート(現リクルート・ホールディングス)にて不動産、ブライダル領域の編集に長年にわたって携わる。その後フリーランスとして住宅、都市開発、メディカル、ブライダルなど様々な分野で取材執筆活動を行う。東京⇒名古屋⇒大阪の転居を2回ずつ経験したことで、各都市の住宅事情にも精通。日本各地への取材、旅行経験も豊富。現在は大阪府吹田市「千里ニュータウン」在住。