不動産経済コラム

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主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.09

下落に転じた基準地価、
今後の動向は?

2020.10.29

2)首都圏一都三県の住宅地、地価変動は?

東京都は23区の住宅地が地価上昇を維持

東京都全体の動きとしては全用途平均変動率が0.6%上昇、8年連続の上昇となりました。ただ、前年(4.1%上昇)からは伸びが鈍化しています。新型コロナウイルスの影響で飲食業や観光業の事業活動が停滞し、全国一の基準地価である銀座1丁目駅に近い商業地も5.1%の下落を示しています。一方で、6月に東京メトロ日比谷線の「虎ノ門ヒルズ」駅が開業したエリアに近い港区虎ノ門1丁目や港区西新橋2丁目、3月にJR山手線「高輪ゲートウェイ」駅が開業した港区高輪2丁目など大幅に地価が上昇したエリアもあります。

住宅地では東京都全体の変動率が0.2%の上昇(前年は2.5%)となり、前年よりもプラスをキープしていますが、上昇幅は縮小しました。23区では1.4%上昇(4.6%上昇)となり、全ての区がプラスの数値を示していますが、こちらも上昇幅は縮小しています。

東京都の住宅地、地価変動

東京都の住宅地、地価変動

23区内で上昇率が高いのは新宿区、荒川区、文京区、北区、渋谷区などでした。特に、北区、荒川区など23区の北東エリアは都心への交通利便性が高い一方で価格水準が相対的に低いことから、比較的高い上昇率を示しています。近年、東京都心部での地価上昇が顕著だった影響もあり、都心部を避けた近辺部への需要が継続していると考えられます。

多摩地域では、武蔵野市、府中市、調布市、小金井市などが上昇を維持しているものの上昇幅が縮小しているほか、日野市をはじめ18 市町が下落へ転じるなど、全体としては下落の基調が強まっています。

地価下落となった個別地点には、大田区田園調布5丁目をはじめ、駅から離れた一戸建て住宅街が並んでいます。第一種住居専用地域の閑静な住宅街であるものの、商業施設などが少なく生活利便性に難点がある場所は人気が下がる傾向がみられています。

一方で、新駅開業によるアクセス改善など、地価上昇をもたらすケースが今後も考えられるでしょう。リニア中央新幹線の新駅が予定される品川周辺などは、今後も注目されるエリアになりそうです。

埼玉県も4年ぶりの地価下落に

埼玉県全体の住宅地変動率は▲0.3%と、前年の0.7%上昇から4年ぶりの下落となりました。

昨年の調査では27市町村が上昇(プラスの数値)を示していましたが、今回は東京都に近接するさいたま市、川口市、戸田市など6市にとどまっています。

中でも、地価上昇率の上位ポイントには川口市並木元町55番地が5.2%、川口市飯塚一丁目が5.2%と高い上昇率を示したほか、上位5位までを川口市が占める結果となっています。東京都心への良好な交通アクセスと、ショッピングモールなど商業施設も充実し、バランスのとれた住環境が注目を集めているようです。他にも、近隣の戸田市や蕨市、和光市など東京への交通利便性を背景に上昇が続いています。

埼玉県の住宅地、地価変動

埼玉県の住宅地、地価変動

地域別にみると、さいたま市全体の変動率は0.3%(1.9%)の上昇となりました。区別では都心に直結する京浜東北線や埼京線が通っている大宮、中央、浦和、南の4区は1%以上の上昇。北、緑の2区は1%未満の上昇、その他4区は下落となっています。さいたま市のなかでも、東京都心部へのアクセスが便利なエリアでは、根強い住宅地需要があると判断できそうです。

また、川越市、越谷市、所沢市など 20 市町では、下落に転じています。そのほか、人口減少と少子高齢化が進む県北部や秩父地域では下落傾向が続いていますが、今回の調査では下落幅が拡大しています。