不動産経済コラム

不動産経済コラム

主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。

Vol.09

下落に転じた基準地価、
今後の動向は?

2020.10.29

まとめ

ご覧のように、コロナ禍によって地価は下落基調に転じたことが明らかになりました。

ただし、全体が同じ動きを見せているのではありません。都心商業地や観光需要が高かったエリアでは今後の需要回復見通しも不透明なままではありますが、実需に伴う住宅地の動きは上昇基調が続いているエリアもみられました。

住宅地の中でも地価上昇が続いている地点と、下落に転じた場所、下落幅が広がった場所もありました。今後もテレワークの増加によるオフィスの見直しなど、ウィズコロナ時代の新しい生活様式への移行が進むことによって、住宅地としての土地需要にも変化が起こる可能性があります。

そのひとつは通勤利便性の優先順位を下げた住宅地選びの考え方です。 テレワークが浸透し、会社によっては今後もテレワークを継続または推進することを打ち出しているケースも多数みられます。従来の通勤時間や駅からの距離といった交通条件を重視した住まい選びの傾向が薄れる可能性があります。

それに伴って、テレワークの場となる住まいの快適性を重視する傾向が強まっていくでしょう。性能面や住環境などの暮らしやすさやワークスペース確保のための間数を重視した住まい探しのニーズが高まりそうです。その結果、価格と快適性、広さなどのバランスをとりやすい都市近郊型の生活利便性の高いエリアが人気となるかもしれません。たとえば今回の地価調査でも上昇傾向がみられた埼玉県の川口市や戸田市、東京都の北区や荒川区といったエリアです。

新型コロナウイルスの影響がいつまで続くのか、経済回復はどう推移していくのか? まだまだ、不透明な要素がたくさんあります。新しい生活様式が浸透し、様々な価値観の変化が定着するまで、地価の調整局面はしばらく続くと思われます。

文:井村 幸治(フリーランスエディター&ライター)
2020年10月掲載

  • フリーランス&ライター

    井村 幸治 いむら こうじ

フリーランスエディター&ライター。1964年、和歌山県生まれ。リクルート(現リクルート・ホールディングス)にて不動産、ブライダル領域の編集に長年にわたって携わる。その後フリーランスとして住宅、都市開発、メディカル、ブライダルなど様々な分野で取材執筆活動を行う。東京⇒名古屋⇒大阪の転居を2回ずつ経験したことで、各都市の住宅事情にも精通。日本各地への取材、旅行経験も豊富。現在は大阪府吹田市「千里ニュータウン」在住。