不動産経済コラム

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Vol.10

食中毒から身を守るための予防と対策

2018.08.31

野村 真帆

薬学部卒業後製薬会社で勤務し、結婚を機に退職。現在は主婦業の傍ら資格を活かし薬剤師として活動中。近頃はコラムなどの執筆活動にも活躍の幅を広げる。

1年を通して気を付けたい食中毒。ひとくちに食中毒といっても種類は様々で、予防方法や殺菌方法も違ってきます。また、気を付けているつもりでも、思わぬところから食中毒が発生してしまう可能性もあります。日常生活の中に潜む食中毒の落とし穴を知って、安全な食生活を送りましょう。

まずは食中毒の種類を知りましょう

食中毒には「細菌性食中毒」と「ウイルス性食中毒」の2種類があります。両者は似たものと捉えられることもありますが、性質は全く異なります。

見落とされがちな場所でも細菌が繁殖

もちろん、皆さん日ごろから食品の取り扱いや調理器具の管理には気を付けていると思います。しかし、意外な場所から食中毒の原因である細菌やウイルスが広がってしまう可能性もあります。

たとえばスポンジ。使用後に洗剤を落として水を切っているだけの人も多いのではないでしょうか。とある研究では、スポンジ1インチあたり820億個もの細菌が存在しているものもあるという結果も出ています。スポンジに細菌がついていると、それが食器に移って広がってしまう可能性もあります。使用後は全体に洗剤を馴染ませておくようにしましょう。

また、冷蔵庫の取っ手部分やコンロのスイッチなども見落とされがちな場所です。調理の途中などに、生の食材を触ったでそのまま触れることも多いので、細菌が付着して増殖してしまう可能性があります。洗剤を付けてふき取り掃除をするなど、こまめな清掃が欠かせません。

発生・増殖を抑えるために必要な事とは?

細菌やウイルスの増殖を抑えるのに最も有効なのは温度管理です。細菌やウイルスの多くは低温に弱く、10℃以下で増殖が遅延、-15℃以下で停止するので、冷蔵や冷凍が必要な食品は、すぐに冷蔵庫や冷凍庫にしまいましょう。また、加熱調理も食中毒予防に有効な手段です。75℃~90℃近い温度で1分以上加熱調理することによって、仮に細菌やウイルスが付着した場合でも死滅させることができます。

ただし、セレウス菌とウェルシュ菌は熱に強く、100℃以上で加熱しても死滅しないので、注意が必要です。また、カビも加熱すれば死滅すると思っている方がいますが、カビは加熱しても死滅しないので、発生してしまった場合は食べずに廃棄してください。

他にも、酢やニンニク、ショウガ、ワサビなど殺菌・抗菌作用のある食品を料理に使用するのも有効です。日本では、昔から料理に多くの薬味をとり入れてきました。江戸時代に広まった握り寿司は、酢飯にわさびと醤油に漬けたネタを乗せ、ガリで箸休め、シメはお茶と、殺菌・抗菌効果がある食材が使われています。衛生状態が今ほど良くなかった江戸時代には、食中毒予防の点からも理にかなった料理だったのです。 現代でも食材の殺菌・抗菌の力が役立っています。スーパーマーケットでお刺身を買う際、下に大葉が敷かれていることが多いと思います。これは見た目だけでなく大葉の持つ殺菌効果を期待してのことなのです。

大切なのは菌を「付けない」「増やさない」「排除する」

とても怖い食中毒ですが、しっかりと対策をとっていれば十分に予防をすることができます。調理前や食品を扱う前にはしっかりと手を洗い、調理器具を清潔に保つことによって菌を「付けない」。温度管理をしっかりとして食品を保存することによって菌を「増やさない」。加熱調理や殺菌効果のある食材を使用することによって菌を「排除する」。この3つの対策・予防を意識して、安全な食卓を守っていきましょう。

2018年8月掲載
※掲載の写真は全てImage photoです。